自己暗示と苦痛
自己暗示で苦痛を取除くことは可能です。自己暗示と潜在意識の特質を利用することで可能性が広がります。
苦痛は注意力を独占してしまい、意識を敏感にするので、自己暗示をうまく誘導するのに必要な潜在意識の発露を妨げてしまいます。したがって、「無痛」という考えを潜在意識に伝えても、正反対の状態、つまり苦痛に圧倒されてしまうでしょう。
この困難を克服するには新しい方法が必要です。
ある考えを口にすれば、その考えは、口がそれを唱えている間に、必ず心を占有する。もしそれを考えていなければ、それを話すこともできない。続けざまに「痛くない」とくり返すことによって、その考えを心の中で更新するのです。
「痛くない」という言葉を非常に早くくり返して、反対の連想が介入しようとしても、その余裕を与えなければ、心は否が応でも「痛くない」と考えるしかないはずです。
潜在意識を表面化させて暗示をかけるというのが一般的な方法ですが、このような方法でも、同じ目的を達成できるのです。
つまり、ある考えが、反対の連想を呼び起さずに、心を占有してしまう状態を作れるのです。
これこそは、自己暗示を受容させる第一条件で、実際にこの手法によってのみ「痛くない」という考えの実現を潜在意識に強制して、苦痛を止めることができるのです。
歯痛や頭痛などの激しい苦痛に悩んでいるときは、座って目を閉じ、静かに、その苦痛をこれから取り除いてやると自らに保証する。
そっと手で患部をさすりながら、できるだけ早口に音を絶え間なく流すような調子で「消える、消える、・・・・・・消えた!」とくり返す。
およそ一分くらい深呼吸が必要になるまでぶっ続けに唱え、「きえた!」という言葉は一番最後のところで用いる。
以上のようにすれば、苦痛は完全に止まるか、少なくともかなりひくでしょう。
痛みが止まった場合は、もうぶり返すことはないという暗示を、痛みがひいただけの場合は、もうじき完全に止まってしまうという暗示を各々かける。
この方法を用いれば、誇張抜きにして、だいたいどんな苦痛でも支配できるはずです。
何度もくり返さなければならないときもあるでしょう。
しかし勇気を失わず、毅然として苦痛に立ち向かえば、きっと成功するでしょう。
「消える・・・消えた」「治る・・・治った」等でよいでしょう。
この方法は、心配、恐怖、意気消沈といった心の苦痛にも、同様の効力を生じます。この場合手でさする箇所は額です。
手の動きに必要以上の努力をはらってはいけません。
ただ苦痛が消えるという自己暗示を口早にくり返し、特定の箇所に引きつけるための手の動きだけが、必要な努力の全てです。
これは練習しだいでだんだんやさしくなってきて、自然とその状態になるはずです。そうなれば、潜在意識が自己暗示の効果を果たすのに必要な全ての調節を引き受けます。
この方法に熟達すれば、声に出さなくても、唇と舌で言葉を形作るだけで効果が現れるようになります。
しかし、初心者の場合は、当分の間、音声に頼るべきです。
苦痛や苦悩に打ちひしがれて、「消える、消える・・・・」という言葉をくり返すだけの気力もない場合は、努力は逆効果なので、力を抜いて楽にして、「痛い」「苦しい」という考えを一時放置しておきます。
そうしている間に、気力が湧いてきて、心が支配権を主張しはじめたら自己暗示をかけるようにする。
この方法は、苦痛を除去するだけではなく、苦痛の原因を改善することで、苦痛を取り除くことにもなります。
これは、エミール・クーエの自己暗示に基づいた説明です。
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